第一部は静岡県における選挙の歴史を,衆議院議員の動向を中心に概観しています.各自民党議員が静岡県議,静岡市議,静岡市長,静岡県知事などとどのような連合を結びつつ,自分の領土を確保・拡大させていったのか,きわめて詳細な歴史分析が提示されています.第一部だけ切り離すと,静岡政治に大分詳しくなるとは思いますが,静岡に興味の無い人間が読んで面白いかというと微妙です.むろん,政治学徒として地方政治と国会政治の関連性や,地方政治家たちの葛藤や勢力争いには興味もそそられるものの,やや長ったらしいという印象もぬぐえません.一方,第二部は政党組織の分析に当てられており,連合町内会の動員や,地方議員の動き,さらには有権者の投票行動が分析されています.従来の仮説を覆すような発見もあります.例えば,筆者は「小選挙区化によって組織票動員努力が強くなった」という従来の仮説を否定しています.むしろ,静岡一区からは,逆の結果が現れたというのです.ですが,静岡一区が最も特殊な選挙区であったことを鑑みれば,この分析結果の妥当性が非常に疑わしく見えます.少なくとも,n=1ですし,静岡一区と同条件の選挙区との比較もありません.よく調べてありますが,残念です.